幸町IVFクリニック

院長

凍結保存胚の劣化

2020.09.24

幸町IVFクリニック院長 雀部です。このブログでは、私が普段読んでいる論文の中から、皆様に興味を持ってもらえそうな内容の論文を独断と偏見で選んで紹介しています。

今回は、胚の凍結保存期間が治療成績に及ぼす影響についての話です。

凍結胚は、マイナス196℃の液体窒素の中で保存します。マイナス196℃では、細胞内のすべての生命活動が停止している状態になりますので、長期にわたって細胞の保存が可能になります。この技術による恩恵は大きく、生殖医療の現場では必須の技術になっています。

しかし、これだけ普及している技術にも関わらず、凍結保存中の胚の劣化に関する研究は、これまでほとんど行われてきませんでした。

今年の7月に発表された凍結保存期間が治療成績に及ぼす影響について検証した研究を紹介します。

Li, J., et al. (2020). “The effect of storage time after vitrification on pregnancy and neonatal outcomes among 24 698 patients following the first embryo transfer cycles.” Hum Reprod.

目的:ガラス化法によって凍結した胚の保存期間が、胚の生存性、妊娠結果、新生児結果に及ぼす影響を検討すること

研究デザイン:後ろ向き研究

対象:2011年1月~2017年12月の間に、ガラス化法で全胚凍結後、初回の融解胚移植を行った24,698人の患者さん

グループ1(保存期間3ヶ月未満)11,330人

グループ2(保存期間3-6ヶ月)9,614人

グループ3(保存期間6-12ヶ月)3,188人

グループ4(保存期間12-24ヶ月)566人

グループ1を参照グループとして、グループ2-4と比較した。

結論:生化学的妊娠率、臨床妊娠率、生産率は、保存期間が長くなるに従い有意に低下した。新生児に対する有害事象(早産、低出生体重児、高出生体重児、巨大児、先天異常)に、有意差は認めなかった。

(詳細は、原文を参照してください)

後ろ向き研究&単一施設データなのでエビデンスレベルは低く、鵜呑みにはできませんが、衝撃的な結論です。10年とか20年など極端に長い保存期間は別として、通常の臨床で行われている保存期間であれば、凍結胚の劣化に関しては誤差範囲と考えている医師が多いと思います。今後、エビデンスレベルの高い前向き研究または多施設研究の実施が望まれます。

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