幸町IVFクリニック

培養室

精子の質を調べる検査

2025.04.22

こんにちは。

今回は培養室の原が

「精子の質を調べる検査」についてお話させて頂きます。

 

妊活を意識して病院を受診すると、

大きな不妊の原因となるものがないかどうか

女性も男性もそれぞれに検査を行います。

 

男性の検査で最も一般的で一番大事な検査は精液検査です。

 

一般精液検査は

 

・精液量

・精子濃度

・運動率

・奇形率

 

などを調べて精子を評価する検査です。

 

精子は膣内で射精されたあと、

卵子と受精するために自力で子宮や卵管を通過して

卵子にたどり着く必要があります。

 

そのため、運動性の良い精子がたくさんいる所見の方が

妊娠率は高くなります。

 

ところが、実際には

精液検査で異常がなく、通常の体外受精を行ったにも関わらず

受精卵が全く得られないという場合があります。

 

このことから考えると、正しく受精するためには

精子の数や運動性、正常性などの「見た目」だけでは

精子の受精する能力を正しく評価できないということになります。

 

精子の受精する能力は、精子のDNA損傷具合が高いほど

低下してしまうことが分かっています。

 

また、精子のDNA損傷具合が高いと、

胚盤胞への発生能の低下、流産率の上昇を

招いてしまうことも分かっています。

 

精子のDNA損傷の主な原因は「活性酸素」と考えられています。

 

活性酸素は喫煙、ストレス、紫外線、化学物質などが原因で

体に増えてしまいます。

 

活性酸素に対抗する体の力が「抗酸化力」です。

 

質の高い精子を獲得するためには

過剰な活性酸素を発生させず、抗酸化力を高めることにより

DNA損傷から精子を守ることが重要となります。

 

最近、

 

・DNAの損傷具合を調べることができる「精子DNA損傷検査」

 

・精子の抗酸化力を調べることができる「抗酸化力検査」

 

が登場しました。

 

これにより、今まで一般精液検査だけでは分からなかった

「精子の質」を明らかにできるようになりました。

 

・精液検査の結果が悪かった方

・精液検査の結果にばらつきがあり、気になっている方

・これまでの体外受精で良好胚が得られなかった方

・一通りの検査を受けたにも関わらず不妊の原因が分からない方

・流産を繰り返している方

・高齢の方

 

などに向いている検査です。

 

一般精液検査の結果が良好だったとしても、

見た目ではわからない「精子の質」を明らかにすることで

今後の治療方針を決める材料にできます。

 

何か心当たりのある方、

心当たりがなくても検査結果が気になる方は

ぜひ「精子の質」を調べる検査を受けてみてください。

 

また今年度については、

まだ結婚や妊娠の予定はないけれど、

将来の妊娠に備えて検査をしたいと考えている方に

特に「精子DNA損傷検査」はお勧めです。

 

東京都では昨年度、

若い世代がプレコンセプションケアに興味や関心を持ち、

取り組むきっかけになるように「TOKYOプレコンゼミ」

というものを開催していました。

 

プレコンセプションケアとは

「未来の妊娠のために予め準備をすること」です。

 

つい先日、

今年度も継続して「TOKYOプレコンゼミ」が

開催されることが発表されました。

 

プレコンゼミを受講された方は、

登録医療施設にて受けた検査の費用の助成を受けることができます。

 

対象は

これから妊娠・出産を考える都内在住の18-39歳の方、

パートナーの有無は問われておらず、

未婚の方でも検査することが可能です。

 

去年度、

助成額は女性が上限3万円、男性が上限2万円でしたが、

今年度は女性が上限3万円、男性が上限3万円と

男性の助成額が増えました。

 

去年度は助成の対象ではありませんでしたが、

今年度は「精子DNA損傷検査」がプレコンゼミの検査

で実施できるようになります。

※「抗酸化力検査」は対象外です。

 

詳しい内容や他の検査項目についてはホームページをご確認下さい。

東京プレコンゼミHP

 

会場参加もありますが、オンラインで受講することも可能で、

気軽に参加できる体制が整っています。

 

ご興味のある方は、ぜひ「TOKYOプレコンゼミ」を

受講してみてください。

 

不妊の原因は男性と女性半分ずつといわれています。

 

女性だけでなく男性も積極的に検査することも大事なのかなと思います。

 

また、今回のことに関連したお話を

いくつか過去のブログでお話しています。

 

こちらも合わせてご覧ください!

 

・精子DNA損傷検査を行って結果が悪かった場合のお話

精子の質を上げよう! (2023年10月24日のブログ)

 

・精子DNA損傷検査を行って結果が悪かった場合に有効な技術

当院の精液処理法(2020年1月8日のブログ)

ZyMotザイモート、精子セパレーターのお話をしています。

 

監修医師紹介

院長 雀部 豊

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊

医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。

※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。

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