幸町IVFクリニック

院長

体外受精は悪者ではなかった!

2019.07.25

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今日は、生殖補助医療と周産期(妊娠22週~出生後7日未満)リスクの話です。

「体外受精児は、周産期リスクが高い」というデータがいろんなところで発表されています。それに伴い、体外受精をやると周産期リスクが増大すると考えている方が、患者さんだけに留まらず、医療関係者にもいます。

そのような話が出るたびに、「体外受精児の周産期リスクが高いのは、体外受精の技術自体に問題があるのではなく、比較している集団の背景の差に起因している可能性がある」ということ説明しています。

しかし、それを実際に証明するのは非常に難しく、結論が出ていない状態が続いています。その難問を、(完璧ではありませんが)かなり気持ちよく証明してくれた研究を紹介します。今年の3月に発表された論文です。

Goisis, A., et al. (2019). “Medically assisted reproduction and birth outcomes: a within-family analysis using Finnish population registers.” Lancet 393(10177): 1225-1232.

この研究の画期的なところは、家族内に体外受精児と自然妊娠児がいる家族のみを抽出し、体外受精児と自然妊娠児を比較した点です。これにより、比較する集団の背景のバイアスを(完璧ではありませんが)かなり取り除くことができます。

フィンランドにて行われた研究です。2000年末時点で0-14歳の子供が少なくとも1人いる家庭の20%をカバーできる65,723人を対象としました。

評価項目は、出生時体重、妊娠期間、低出生体重児リスク、早産リスクです。

自然妊娠児62,947人、体外受精児2,776人でした。その内1245人が、兄弟姉妹間比較の対象となりました(自然妊娠児620人、体外受精児625人)。

全データの比較では、体外受精児は、(自然妊娠児に比べて)周産期リスクが高いことがわかりました(例えば、出生体重は60g軽く、早産リスクは2.15ポイント高い)。

ところが、兄弟姉妹間比較では、その周産期リスクが統計学的、実質的に軽減されることがわかりました(例えば、出生体重は30g軽く、早産リスクは1.56ポイント高い)。

結論は、
我々の結果は、「体外受精児の周産期リスク増大は、大部分が体外受精の技術自体以外の因子に起因している」ことを示している
でした。

体外受精の治療を受けているご夫婦にとっては、「ほっと」する結論だと思います。しかし、ただ「ほっと」するだけで終わらせてはいけません。

体外受精を必要としているご夫婦は、周産期リスクを高めるような背景を持っていることがあります。そのような背景を持っていた場合、妊娠した後に実際に周産期リスクに直面する可能性があります。そうならないためにも、体外受精の技術力で妊娠させてもらうのではなく、「身体づくりをしっかりやりながら、体外受精の力を借りて妊娠するんだ」という姿勢が重要になってきます。

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