採卵周期と凍結胚移植周期の間隔
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
今回は、採卵周期と凍結胚移植周期の間隔の話です。
採卵を行った後、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発症回避のため、または内膜が薄いなどの理由により、胚移植がキャンセルになり全胚凍結になることがあります。そうなると次に気になるのが、いつ凍結胚移植できるかだと思います。
私は、「いつ凍結胚移植できますか?」という質問を受けると、「次の周期以降、都合のいい時期にできますよ」と答えています。
次の周期の月経2-3日目に来院してもらい、エストロゲンとプロゲステロンが月経期の値を示していれば、卵巣に遺残卵胞などが多少残っていても治療開始可です。もちろん、エストロゲン高値などホルモン検査で異常値が出ている場合は、治療開始を見送りますが頻度としては比較的まれです。
しかし、患者さんの中には卵巣刺激の影響が完全に抜けきっていない状態で、次の治療に入っていくことに不安を感じる方がいらっしゃいます。
採卵周期直後の周期で凍結胚移植を行った場合と、少し休んでから凍結胚移植を行った場合の生産率を比較した研究を紹介します。9月に発表されたばかりの論文です。
この研究の目的は、採卵周期とそれに引き続き行われる凍結胚移植周期の間隔が、治療成績に影響するかどうかを検討することです。
1施設で行われた後ろ向きコホート研究です。
全胚凍結に引き続いて行われた凍結胚移植1540周期が対象です。採卵周期後すぐに行われた凍結胚移植周期を「周期1」、採卵周期後1~数周期休んだ後に行われた凍結胚移植周期を「周期2以上」とし、2群間で生産率を比較しました。
その結果、「周期1」の生産率33.1%、「周期2以上」34.2%で、統計学的有意差はありませんでした。
2群間の背景条件を補正後も、凍結胚移植周期を実施するタイミングは、生産率に影響しませんでした。
結論は、「採卵周期後の凍結胚移植実施前に休みの周期を設ける必要はない」でした。
採卵周期後の凍結胚移植は、すぐ次の周期にやっても大丈夫です。ただし、根を詰めすぎて燃え尽きないように注意してください。精神的に疲れているときは、休むことも重要です。
監修医師紹介

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊
医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。