なんでわざわざ凍結? その2
2018.02.08
幸町IVFクリニック 院長 雀部です。
前回凍結の技術が新しくなって成績が改善したと言う話をしました。しかし、「凍結技術の成績が改善したからといって、なんでわざわざ凍結しなければいけないの?」という疑問を持たれている方がいらっしゃると思いますので話の続きをしましょう。
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凍結
融解胚移植に持ち込むメリットを3つ挙げておきます。
1 融解胚移植の方がより良い着床環境を作ることができる
採卵を行う周期より融解胚移植を行う周期の方が
より良い着床環境を作る
ことができます。
の
は二の次になってきます。
それに対して、融解胚移植を行う周期は、採卵する必要がありませんので、着床環境を整えることに集中できます。
いう
排卵誘発剤を使って
卵巣刺激
を行うと、
他にも、
卵巣刺激の結果もたらされる高エストロゲン状態が、着床環境に悪影響を及ぼしている可能性が多くの論文で指摘されています。
これらの問題は、凍結融解胚移植に持ち込むことにより解決できます。
まだあります。
卵巣刺激
の終盤
にプロゲステロンの血中濃度が上がってくることがいう
やり方で凍結融解胚移植を行うと、
日齢
と胚の日齢を
簡単に
div>ぴったり合わせることができます。 ERA検査などで胚移植のタイミングがずれていることを指摘された場合、時間単位で補正することが可能です。
div>ぴったり合わせることができます
2 卵巣過剰刺激症候群を回避できる
凍結融解胚移植の1番のメリットはこれです。
まず、卵巣過剰刺激症候群とは何かについて説明しておきましょう。卵巣刺激の際に、排卵誘発剤(主に注射)を使いすぎると、卵巣にたくさんの卵胞が育ち、大量のエストロゲンが出てきます。その状況に
、
hCGと言うホルモンが加わると一気に悪い方向へ
事態
が進みます。全身の血管の透過性が変わって、
して
溜ま
り
、
非常に怖い合併症で、重症化すると命に関わってきます。
hCGというホルモンが加わる機会としては主に二通りあります。採卵の2日前に打つ注射、そして妊娠した時です。後者の妊娠を回避する、要するに胚移植をキャンセルして凍結保存することによって、卵巣過剰刺激症候群の発症を回避でき
ます
。
以前、緩慢凍結法を行っていた頃は、凍結の成績があまり芳しくなかったので、
なるべく
新鮮胚を移植する方向で治療しました。
すると
、
でてきます
。
ところが、今では凍結融解胚移植の成績
が良好なので、
卵巣過剰刺激症候群の発症のリスクがありそう
迷うことなく
凍結保存
を決断
すること
ができます。
3 異所性妊娠(
いわゆる
子宮外妊娠)が少ない
体外受精でも異所性妊娠が起きることをご存知ですか
?
子宮内に胚を戻すのに
、
なんで
異所性
妊娠
になる
のか
不思議ですよね
。
実は、その
メカニズムは
、まだ解明されていません。
なぜか子宮内
に戻した胚が、
わざわざ卵管の方に上がって
行って
しまいます
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当院でも、
以前
、新鮮胚移植による妊娠が妊娠症例の大部分を占めていたころは、よく異所性妊娠に悩まされていました。ところが、凍結融解胚移植による妊娠が妊娠症例の大部分を占めるようになってから、それがピタッと収まりました(もちろんゼロではありません)。
これは、私の感覚的なものだけではありません。論文にもまとまっています。
Ishihara, O., et al. (2011). “Frozen-thawed blastocyst transfer reduces ectopic pregnancy risk: an analysis of single embryo transfer cycles in Japan.” Fertil Steril 95(6): 1966-1969.
日本産科婦人科学会が全国の生殖補助医療実施施設から集めたデータを解析した論文です。凍結融解胚盤胞移植は、新鮮胚盤胞移植に比べて、異所性妊娠の頻度が有意に低下するとの内容です。
過去に異所性妊娠を経験した方、卵管に問題がある方など異所性妊娠のリスクが高いご夫婦には、積極的に凍結融解胚移植を勧めています。
凍結融解胚移植のメリットを説明してきましたが、現在一般に行われている急速ガラス化法も万能ではありません。胚が弱いと壊れることがあります。それから、新鮮胚移植がまったくダメという訳ではありません。新鮮胚移植で普通に妊娠される方もいらっしゃいます。体外受精は、画一的なやり方ではうまくいきません。治療の経過中に得られたデータをよく解析し、患者さんごとに方針を組み立てる必要があります。治療を受ける側のご夫婦も、凍結融解胚移植のメリットをよく理解し、治療に役立てていただければ幸いです。
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